第7章 ユウガタのウサギ
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もっしもーし!阿伏兎さんですかー?と陽気に聞こえてくる今日の問題児。
ヘラヘラと笑う顔が思い浮かんでため息をついた。
《どう調子は?元気ー?》
「元気もなにも、団長が予想以上に取り乱してるんだが…」
《神威が?》
「早口であんたの説明長々としてくれたさ」
《へぇ。長くいりゃ、私の生態も理解してきたか!んで?あと何日?》
「…3日だ」
《3日!おぉ上出来!》
「上出来じゃねェ!ちゃんと終わらして帰ってこいよ。団長を抑えるのに苦労すんだぞ?こっちは」
《はいはーいっと。これでも調べて地球には来てんだからね?
游燐が勤めてた元殺し屋チームのボスと関わりがあるみたいでさ。一気に潰すよ》
「それは結構だが、無理はするなよサクラ」
《大丈夫!…游燐には言わないでよ。めんどくさくなるから》
「へーへー。分かりましたよ」
《頼んだよ阿伏兎!》
「どうせ言われると思ってたさ」
《あはは!地球じゃあもう夜だから切るよ。じゃあね》
「サクラ」
《ん?》
「寂しくなったら連絡してこいよ」
《!》
「一応、俺の方が長くいるからな。」
《…うん!じゃあね》
「ああ」
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通話を終了し、川沿いの草原に腰を下ろす。
サァ…ッと少し冷たい風が吹いて、身震いをした。
『阿伏兎は、何でも分かるんだなァ
……やっぱり、1人は寂しい。』
本当は出発する前、阿伏兎にだけ言ってきた。
付いてきてほしかったんじゃない。ただ、私が安心して帰れる場所を作ってほしかったんだ。
もしも阿伏兎から電話が来なかったら私からかけていたかもしれない。
兎は寂しいと死んじゃうんだから。
『なんて、綺麗事か…』
「そんなことねェよ」
『え…っ銀さん?』
銀さんは私の隣にドカリと座った。
「‘‘寂しい’’って感情は別に綺麗事でもなんでもねェ。持っとくべきなんだよ」
『……そうだね』
______なら、神威も寂しいの?私がいなくなって、寂しいって思ってくれてる?
『…あれ?』
何で今、神威が思い浮かんだんだろ。
『おっかしーね』
私の小さな独り言は銀さんに聞こえず、暗い空へと消えていった。
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