第6章 将軍暗殺篇
『阿伏兎、いい所に。私を船に戻してよ』
神威は約束守ってくれなさそうだし、と呟くけれど、阿伏兎はため息をついただけで、私の横を通り過ぎた。
「おーい団長、だから勝手なマネはやめろっつったろ」
阿伏兎は、爆発の衝撃で床に寝転がった神威に向けてそう話した。
ムクっと身体を起こした神威には、生々しく船の一部分のパイプが背からぶっ刺さっていた。
『うっわー…。神威痛いわソレ』
「もろい船だな。折角いいところだったのに」
『その爆発が邪魔しなければ、ね』
「ああ、いい所だった。あとちょっとズレてたらハタ迷惑なすっとこどっこいともお別れだったんだが」
「ちょっと待っててよ。あとスグで片づく」
『えぇ!?私もう帰りたいんだけど!』
「待たねェ。こんな船と心中はご免だ。それにもう、片づいたさ」
団員は、男に向かってゆっくりと間を詰めていった。
そして一斉に飛びかかろうとした時…
「そのへんにしときな。もう充分だろ」
艦内の屋根に佇む一人の男
「首なら、将軍の首なら、もうここにあるぜ」
将軍の首を見せつけるように差し出したのは、服部家頭首、服部全蔵だった。
「シメーだ。お前達の主君はもう死んだ。お前達の護るべきものはもういない」
「あれは?流石は仕事が早いねェ」
『本当。他の忍と格が違う』
「服部全蔵。将軍暗殺計画の要。伊賀州を束ねる頭目の一人だ」
服部全蔵は将軍の首片手に屋根から飛び降りると、私達の方へ歩み寄ってきた。
「田舎っぺどもと一緒にするな。こんな烏合の衆、率いた覚えはねェよ。
伊賀を牛耳る三大上忍といっても服部(ウチ)はとっくに江戸派(シティーは)で通ってんだ」
『ふうん。なら、アンタ一人送りさえすれば済んだ話だったんだ?』
「ああ、随分と派手にやらかしてくれたもんだな」