第5章 ヒルのウサギ

『まぁ、部下の失敗は上司の責任ってね。…神威はそんなことしないけど(笑)』


縄をほどきながら、游燐の頭をぐしゃっと撫でた。


「許さない…！游燐、あの人を、アタシ達を裏切るのね！！」


ほどき終えた瞬間、雪南は游燐の手首を抑えた。


『落ち着きなされよお姉さん。』


「アンタは黙ってて！」


『…游燐、何か言いたそうだけど』


「はぁ！？何を「…っ、裏切るってなによ！」な…！」


「っ私はあの人に、ちゃんと別れを告げた！」


游燐はそう言うと、自身の頭で雪南の額にぶつけた。
ガツン！！と誰もが痛いと感じる音で。



『おぉ…やるねェ』


「い…ったぁ…！何するの游燐！」


雪南は赤く膨れたがった額をおさえ、涙目だった。


「…貴女達とはもう、赤の他人だって、伝えた！」


『ほう』


「私は…！貴女に指図される人生はごめんよ！！」


「っ…誰に向かってそんな口を…『はーいおやすみ〜』！？」


ガン……ッッ！！

雪南の頭にチョップを食らわしたらあっけなく倒れた。



「サクラ…っ」


『だから呼び捨てやめんか。
……コイツには、阿伏兎に色々聞き出してもらうとしますか…。よっこらせっと』


雪南をおぶって、出口へ歩き出す。



『あっ、そうだ』


「？」


『游燐、アンタにも聞きたいことあるから、後で私の部屋来てね』


「え…」


『ん？私の部屋知ってるでしょ？』


「そ、そうじゃなくて…。私が春雨(ここ)にいたら………」


『あ〜あ。そこんとこは大丈夫大丈夫。神威が何とかしてくれてると思うから。』


「…フフッ。
提督は何もしてくれないんじゃなかったの？」


『…今日は特別なんだよ。』


こんな私にしっかりした部下がついてるから。