第5章 ヒルのウサギ
タタタタ…
通り過ぎる人は走る私達を不思議に思っているだろう。
けれどそんな構ってる暇はない!
「あ、サクラ幹部、副団長が探してましたよ」
『えっ?あっそう…、じゃあ提督室に集まってって言っといてー!』
安全な場所は春雨内には無いも同然。
游燐の手を引きながら、廊下をひたすら走る。
「…私の為に、ここまでしてくれるなんて…初めて会ったときと大違い!」
『ちょ…っ、ハァハァ…なんでこんな余裕なの!?くっそしんどいィィ!!』
「…本当に私の上司かしら。」
神威の部屋が一番安全かな、と考えた私はこれからできるだけ誰にも会わぬよう、春雨の隠し通路を使う。
スパイの游燐でさえも知らなかったルートで少しドヤ顔。
「こんな抜け道があるなんて…」
『覚えとくと、っハァ、いいよ…!元老(うえ)からッ、逃げる…ハァハァ…時は、ここをっ使ったり、、するしねッ!』
「もう喋らなくていいわよ」
『若い子って…ハァハァ…体力、っあるよね!』
番傘って地味に重いんだぞ!?腰にぶら下げるのは筋トレと一緒っしょ!?←違う
どうにか走り抜いて、神威の部屋(天井)と繋がっている地下通路への入り口(床扉)にたどり着いた。
『ここを通ったら、神威の部屋に繋がってる。』
「…分かったわ」
『神威なら絶対に助けてくれるから!』
力強くうんうん、と頷いて、パカッと床扉を開ける。滑り台の様になっていて、お先は真っ暗。
『うわ…、真っ暗じゃん…怖いな』
「利用した事は無いの?」
『だって、もとはアホ提督の部屋だったから使う訳ないじゃん(笑)←』
少しホコリ臭くて、早く蓋を閉めたい。
しゃがむ私は、棒立ちしている游燐に声をかけた。
『さっ!先行って!』
「……」
『…?どしたの?』
「ありがとう。」
『へっ?…「本当に…っここまで、ありがとう!!」ん?……っおわ!!』
游燐は私の身体を力強く押し、地下通路へ放り出した。
「さよなら…」
『ッギャァァァァ!!!』
猛烈なスピードで地下通路を下って行く中、私の耳に聞こえたのは、
大きな銃声