第5章 ヒルのウサギ
『…ん?なんか落ちてる』
足元にコロリと当たったのは小さい………
『これって…盗聴器?』
ん?私に付けられてたの?誰が?游燐?それならココに来る事も気づいてたよね。違う場所で電話するよね?英語分からなかったけど。
っていうか付けられた感触なかったから……
『アイツに付けられてた?…いったい誰が?自分で自分に付けるか?普通…』
そういえば、さっき游燐…時間がどうとか言ってたな…。
これから英語勉強しようと少し後悔しながら盗聴器をポケットに入れ、資料室へ向かった。
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小走りで資料室へ向かっていると、少し前を阿伏兎が同様に資料室へ急いでいた。
私も少しスピードを上げ、阿伏兎と横に並ぶ。
『阿伏兎ォ』
「サクラか、游燐は見つかったか!?第七師団が春雨内を探してる」
『えっ分かんない』
「…はァ〜〜…」
『ちょ!なんで、そんなため息つくの!?』
「とにかくだ、游燐に春雨の資料を盗まれちゃ俺たちの首は飛んじまう」
『私達の首が飛ぶ前に、なんとかしないとねェ……っよいしょ!』
資料室の扉を勢いよく蹴り開けると、そこには游燐が焦りながら資料を物色していた。
扉の蹴り開ける音を聞いて気づいたのか、游燐は手に抱えている資料だけを離さずに天井へ逃走しようとしていた。
『やっぱりここか!』
「…っ」
『まァァァてェェいッッ!!!』
ガシ…ッ!
「!わわっ!!」
どしんッッ!!
本棚のはしごを使い、天井に飛び乗ろうとした所をすかさず、私は游燐の足首を掴んだ。
バランスが崩れた游燐は地面に倒れる。起き上がる前に、首元に番傘を突きつける。
「サクラ!」
阿伏兎は直ぐに駆け寄ってきて、私と同じように游燐の首元に番傘を突きつけた。
『ふははッ!また簡単に逃げれると思ったか!』
「く…っ、どきなさいよ!私には時間がないの!!」
『「…時間?」』
「そうよ!」
『そういえば、さっきもタイムって言ってたよね。なにか意味でもあるの?』
「関係ないわ!」
『えぇ〜。じゃあ、どかなーい』
「…」
どう聞いてもラチが明かないようなので、私は阿伏兎に神威を連れてくるように言った。