第5章 ヒルのウサギ
初めて会議に出たもんだから、つまんないったらありゃしない。
欠伸したり、空腹の音を鳴らしたり、阿伏兎には注意されてばっかりだった。
それでも耐え抜き、そろそろ解散となるとき、最後に神威が一言告げた。
「最近、この春雨にスパイが紛れ込んでるって噂がある。噂だけど、皆気をつけてね」
以上。と言うと、師団達は続々と帰っていった。
『ねェ神威。スパイって本当?』
「まだ暫定できないよ。けど、春雨(ここ)の情報は簡単に手に入るものじゃないから大丈夫だと思うけどね」
『セキュリティ万全だもんね〜』
納得した後、私は遊燐を連れて会議室を出た。
またあの長い廊下を歩いている。
「スパィって怖ぃですょね!パパパッて情報盗んじゃぅんですから!」
『そだね。お前のその喋り方が怖いよね』
「もぅ♡サクラ幹部ったら!なんでぃっもそぉゃって♡」
『きも』
シッシッと追い払うように手を振ると、余計に遊燐はくっついて来た。
『あ、そだ。先に幹部室帰っといてさ、後でデータをアンタに送るから調べといて』
「りょぅかいですッ♡……ん?サクラ幹部って幹部室に現れた事なぃですょね??」
『……。たまに行ってるよ』←行ってない
逃げるように、幹部室と逆の方向に歩き出した。
*
春雨の本部から遠く離れた地下。
一部の関係者しか入室できない部屋。
コンピュータから資料本まで全て揃っている。
スパイには決して侵入されてはならない場所である。
私はあるモノを探すためこの場所に来た。
慣れない本を一枚一枚捲っていく。
『ふぇ〜…疲れる…』
読めない字は遊燐にデータを送り解読してもらう。
この作業を何度繰り返したか…