第5章 ヒルのウサギ
たった1人の部下、游燐と共に長い長い廊下を歩いていた。
久しぶりに幹部のスーツ姿で。
游燐の自慢話の8割はスルーしている状態だ。
「ゎたしゎ、2000人の中から選ばれたんですょ♡ ゃっぱり賢ぃってことじゃなぃですかぁ♡」
『いらねー。まじ部下とか必要ねェ…』
目の前の扉が開くと、そこには大ホールと呼ばれる会議室が広がっている。
大きな円テーブルには後2、3人で揃うほどだった。
月一で行われる大会議。
神威提督を始め、第十二師団団長、副団長全員が集まる長会議のこと。
私はこんなクソ会議、出席したことない(だいたいアキラ様とランデヴーしてた)んだけど、今回初めて連れて行かれた。
この"ユバーバ"に。
「サクラ、ユバーバじゃなくて游燐だ。」
『もう何でもいいわンなもん。って阿伏兎いたの?』
阿伏兎が進行役なのか、席に座らず資料を持ち立っている。
初めて大会議に現れた私の姿を見て周りがザワつき始めた。
それでも幹部、と書かれた席はちゃんとあって。その席に座ると、游燐は私の後ろに立った。
他の師団を見ても皆同じ(団長が座り、副団長がその後ろに立つ)ようになっていたため、何も言わなかった。
そこでふと気づいた。
『…ねェ』
少し体を傾けて問いかける。
「なんですかぁ?」
『…(イラッ)隣の席って誰か座るの?』
「提督ですょ?提督ゎ、一番最後に来るのが当たり前なんです♡」
『……ふぅん。(そなの!?全然知らなかった…!!)』
…ん?ってことは、神威が一番偉いから、私がその隣って……凄い事じゃね!?幹部って凄くね!?←
内心ドキドキしながら待っていると、扉が開かれ、神威が入ってきた。
一気に皆のオーラが変わり、厳しい雰囲気になる。
神威は一際豪華な席に座ると、ニコニコしながら資料に目を通す。
「じゃあ、始めようか」
『神威が提督してる……………』
殴るよ、と脅され渋々座り直した。