第2章 アサのウサギ
ニコニコとあの貼り付けた笑顔で近づいて来る神威。
それに気づいて、顔の前で手を振る私。
『ちょ、ちょ、ちょ、ちょーーっい!しんどいよ!ほら見て!汗がダラダラだよ!もうやめた方がいいんじゃないかな!』
「そんなの関係ないよ」
ハァハァと肩で息をする私を無視し、神威はビュッと目の前に拳を突きつける。
『あわわわ…!ちょっと待ってよ!ストップゥゥ!』
目の前でピタッと止められた拳の反動でグラリと身体が傾き、尻餅をついた。痛い。
「あり?サクラは強いって阿伏兎が言ってたんだけどなぁ」
『くそったれ阿伏兎め…!』
今度会ったらボッコボコに…「何考えてるの」
『うっ…わ!』
「考えてる暇があるなら相手してよ」
ババっと横に避けると、さっき尻餅ついていた場所が凹んでいた。…まじかよ〜〜。
『待て!私も命は惜しい!せめてアキラ様と結婚できるまで!!』
「一生無理だよ」
『なぬっ!?』
次は脚を振り下ろされそうになったので、後方に除ける、暑い、無理、帰りたい。
「サクラは俺以外の第七師団の奴ら全員倒したって聞いたことあるんだけど」
『…あ〜。懐かしいね〜。それは若かれしサクラちゃんのお話であって今じゃ…』
「今も昔も関係ないよ。ただサクラと戦いたいんだ。」
『あらま。だんちょ〜に言われるなんて嬉しい言葉、なんだろうけど?私ももう世間と変わらないオバさんですから。若い子見つけてくださーい。』
「…サクラって何歳?」
『うーむ。それ言って幻滅した神威は見たくないなぁ』
「俺の予想は17…まぁいいや。無理矢理でも言わすよ」
『え、こわっ』
「言いたくないなら、俺の攻撃から避ければいい。」
番傘をガチャリと構えると、
ドウンッッ!
私の頬を弾が掠めるスレスレ。
『おぉ…ふ。あっぶなー…!言わすどころか殺すつもりでしょ!?』
神威は全然乙女の気持ちを分かってない!
こう、純粋の乙女ってのは、デリケートだから〜…優し〜いのよ。
『でも、…たまには強さを見せるってのがマナーだよね!』
「!」
ドゴガッシャァァ!!
『乙女の説明書、ちゃんと読んどきなよー。』