第4章 丁か半か篇
小さく火花が飛んだ左腕を後ろに隠しながら、阿伏兎は傘を構えながら後ろへ1歩下がる。
「っサクラ…」
『アハハ…ッ!ねェ、阿伏兎なら、楽しませてくれるでしょ?』
フラフラと阿伏兎に近寄り、右手を振り上げた。
パシッ…
『「!」』
「何してるの?サクラ」
振り上げた手は、神威にとられ、動かしてもビクともしない。
『……神威』
「阿伏兎じゃなくて俺にしなよ。俺なら、楽しませてあげれるよ。」
「やめろ団長!」
ニヤリと神威と顔をあわせると、神威の左腕と私の左脚がぶつかり合った。
すぐに後ろへ飛び退け、地面を蹴り神威へと拳を前へ突き出す。
神威も同時に拳を突き出して、私の拳と交わる。
ビキビキと拳に力を込め、押し返すが神威もなかなか強いため上手く行かない。
顔を伏せたまま、またニヤリと笑うと、足を振り上げる。
神威の顎にヒットした足は容易く捕まり、ブンと壁へと放り投げられた。
ドシャァァァ!!
「サクラ!なにやってんだ団長ォォ!!」
「やっぱりサクラは他の奴と違うね。」
瓦礫の中で、砂ぼこりを叩きながら一歩一歩と前に出る。
「サクラもやめろ!体力の限界が分からねェのか!!」
『……』
神威もこちらに近寄って、向かい合った形になる。
「たまに見せるサクラの変わった姿、強い奴と戦う時に魅せるその姿…」
『……』
「ふざけてるとは思えないし、…過去に何かあったんじゃないのかい」
『…過去に何か?』
「…サクラの親が暗殺された時に、とかね」
『…フフッ。面白い考えだねェ。でも、深入りしても無意味だと思うよ』
「へぇ。どういうこと?」
『……』
バタンッッ
「サクラ?」
「?!大丈夫か!」
『…うっ…』
腹を抱え、床にうずくまる。
その様子を見た阿伏兎は急いで駆け寄ってきた。
『…うう…』
「サクラ!」
「…サクラを医務室に連れて行く。おまえは師団に加わってことを終わらしてきて」
「!あぁ」
神威はそう言うと、私の身体を抱き上げ医務室へと急いだ。
阿伏兎は先へ行った師団へ走って行く。まだ残された敵を排除しに。