第4章 丁か半か篇
『…ん…』
ヒンヤリとした冷たさで目が覚めた。
目だけを動かしコンクリートの床に寝そべっていた。
かすかな血の香り、鉄の匂い、引っ掻いたような壁の跡。
『(牢屋、か…)』
でも、こんな牢屋…春雨にあったかな。
春雨にある牢屋は、あの辰羅が囚われていた所一帯しかないはずだ。
『(じゃあここは…)』
ゆっくりと身体を起こすと首と腕に鎖が何重にも巻き付いていた。
ジャラ…と静かに音を立て、自由な足を動かし檻まで近づく。
『…っ』
檻の外を見ると、見なれた部屋の風景が。
『(な、なんで…あのアホジジイの部屋…)』
何度も訪れたことのある提督の自室。今は誰1人して気配は無い。
出入り口付近からは私の姿を見えないようにして設置されている牢屋。
先ほど感じた匂いや壁の跡、それらを整理するとわかった。
『…なんて悪趣味』
自分が気に入った女をこの牢屋へ押し込み自由を奪い取る。
だからあんなぶっさい顔してたのか。
『(…私を生かしてるなら、神威も生きてるな。)』
ペタペタとコンクリートの上をグルグル回って、どう脱出するか考えていたら、こちらに近づく足音。
すぐさま初めの位置へ戻り、狸寝入りをする。
足音は一つだけ。
遠慮もなしに提督の部屋へ入るなんて本人以外誰がいる。
『…zzZ(鎖切らなくてよかったー…)』
「まだ寝ておるのか。まぁよい」
檻の前に立った本人は、淡々と話だした。
「神威の処刑まであと3日。サクラも神威(やつ)の見せしめを目に焼き付けよ。」
そのままベラベラと話してシャワーへと向かった提督。
ふぅとため息をつき、ゆっくりと仰向けになった。
『(神威の処刑まであと3日……私も同行するのか…じゃあ助け出すのはその時しかないな。)』
そういえば高杉の事はどうなったのだろう。
裏切られる前に裏切るのが春雨(わたしたち)だ。
神威の処刑日には何か大騒ぎになると思うなァ…