第4章 丁か半か篇
神威が立ち上がり、一足先に牢屋を後にする。
「でも残念ながら地球(あっち)にも彼女の居場所はなかったみたいだよ。博打が過ぎたね。…彼女も、お前も…」
這いつくばっていた女は身体を横に倒しカランと茶碗を力なく手から離した。
「……オイ妙な勘ぐりは止めろ。どっかのバカ団長じゃねーんだ。仕事にそんな私情もち込んでたまるか『はいはい』…そもそもコイツはツラも名も変えて地球に逃げてたんだぞ。んなモンわかるワケ…「はいはい」」
「まァいいさ。辰羅の連中のお得意の集団戦術とやらとやり合ってみたかったけど、しょせんサシじゃ夜兎に遠く及ばない雑兵集団。」
『それ勝敗結果は見えてるじゃん。』
中央ホームに戻ると天人がちらほらいる中で一人の男に目がいった。
「そんな事よりまたアイツらに手柄とられちゃったね」
『うーん。そうだねェ』
「そろそろホントにお礼しにいかなきゃいけないかな」
フッとすれ違う男と私達。
神威も男も、足を止めお互いにニヤリと笑った。
「侍に」
*
ゴロンと仰向けになって少し電気が眩しく感じる。
《ずっと、サクラだけを…愛してる》
愛しの声を聞くと、画面上には【HAPPY END】の文字。
『ふー…。』
エンドロールの音楽を聞き流し、耳にかけていたヘッドフォンを首にかける。
不意にベッドの上に置かれている渡された書類に目を通す。これでも一応幹部だからね!?
『……』
用紙にはプロフィールが載っていた。それに、その本人の日常生活だと思われる写真がクリップでまとめられていた。
『……鬼兵隊、高杉晋助』
すれ違った、あの男だ。
書類上には盟約を交わした、と書かれている。
『盟約ねェ…。地球のサムライさんがそんな簡単に天人を信用するかな』
ま、春雨(わたしたち)も鬼兵隊(むこう)も武装集団だから裏切り当たり前か。
仕掛けるとしたら春雨が先かな。
『でも、サムライさんか〜。神威が聞いたら飛びつきそうな…。』
またややこしいことに巻き込まれそうなので、その書類を破棄した。