第3章 吉原炎上篇
「やっと、見せてあげられた。ずっと見せてあげたかった。
この空をあなたに。」
綺麗な空、美しい太陽を見上げる旦那と日輪。
「言ったでしょ。きっとお日様と仲直りをさせてあげるって」
旦那の眼が少し開かれた。
「私…知っていたのよ、ずっと。どんなにエバりくさったって、どんなにヒドい事したって、あなたは夜王なんて大層なものじゃないってこと位。」
あなたはただ、こうしたかったのよね。
こうして日向で居眠りしたかっただけの普通のおじいちゃんなのよね。
「ただ…それだけなのに、なのに…こんなバカげた街まで創って…みんなを敵に回して」
旦那の額に日輪の涙が一滴、こぼれ落ちる。
「バカな人…本当に…」
______バカな男(ひと)
少し微笑んだ旦那は静かに眠りについた。
パチパチパチ…
「よっお見事。実に鮮やかなお手前っ」
『神威さーん。今そんな空気じゃないよ』
「いやはや恐れ入ったよ。」
『聞けよ』
「小さき火が集いに集って、ついぞ夜王の鎖を焼き切り吉原を照らす太陽にまでなったか。」
『でもまぁ…本当凄いよ。まさか夜王を倒しちゃうなんて…!』
「だけど、こんな事したって吉原は何も変わらないと思うよ。」
『コラ。そんな事言うな。』
ムッとして神威を肩パンした。
「吉原にふりかかる闇は夜王だけじゃない。」
『……うん、それは言えるなァ。私達春先に幕府中央暗部、闇は限りなく濃いからねェ…。またすぐに第二の夜王が出てくると思うよ…』
「その闇を全て払えるとでも思っているのかい?本当にこの吉原を変えられると思っているのかい?」
『もっと優しく言えんのかバカヤロー』