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【銀魂】ヨルのウサギ

第3章 吉原炎上篇










血が



肉が



魂が



渇いてゆく






「いけェェェェェ!!!」


「銀さんんんんん!!!」


「夜王の鎖を…」




焼き切れェェェェェ!!!
















太陽の下に延びる旦那。


その頭上に、私と神威が歩み寄った。



「人とは哀れなものだね。己にないもの程、欲しくなる。届かぬものに程、手をのばす」


『夜王になかったもの、それは陽でしたか。』


「旦那、あなたは太陽のせいで渇いていたんじゃない。あなたは太陽がないことに渇いていたんだ。」


『誰よりも疎み、憎みながらも、誰よりも羨み、焦がれていたんですね。
夜兎(わたしたち)が決して手に入れることの出来ない太陽に。』


「冷たい戦場ではなく、あたたかい陽の下で生きることに。
決して消えない、その目の陽に。」


『故にその陽を奪った女達を旦那のいる夜へ、この常夜の国に引きずり込んだ。』


「そしてそれでも、なお消えぬ陽を憎み、愛したんだ。」


『日輪という誰よりも強い女を、愛したんですね。』




すると、旦那から笑声が聴こえた。



「愛?一体そんな言葉、どこで覚えてきた神威、サクラ。
そんなもの、わしが持ち得ぬのは貴様らが一番よく知っているはずだ。」



戦う術しか知らない私達は、力ずくで奪うのみ。気に障るのも全て。



『…愛する方法も、憎む方法も、戦うことでしか表現できません。夜兎というのは。』


「あぁそうだ。神威、お前もいずれ知ろう。
年老い己が来た道を振り返ったとき、我らの道には何もない。
本当に欲しいものを前にしても、それを抱きしめる腕もない。」



爪をつきたてることしかできぬ。


引き寄せれば、引き寄せるほど、爪は深く食い込む。


手をのばせばのばすほど、遠く離れていく。



「お前さえもわしを嫌う。
何故、お前さえ、わしを拒む。
何故、こんなに焦がれているのに、わしは渇いてゆく。」




旦那は閉じかけた眼を薄っすらとあけると、太陽と日輪が美しく映った。



「……ひ、日輪」



私と神威は顔を見合わせ、ニッコリと微笑んだ。






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