第3章 吉原炎上篇
カツンと床に落ちたクナイ。
左胸辺りから流れる血液。
「ったく何してるのサクラ」
『…ちょっとは心配、しろやバカヤロー…』
血を止めるよう胸に手を当てる。
ギロリと旦那を睨んだ。本人は気づいてもいないが。
『こんの旦那め…ちょー痛え』
「クックック… 温い!温いわ!!
貴様らの如きか細い光が幾ら集まろうと!この夜王を干からびさせることはできはせぬ!!」
「バ…バカな…あれだけやってもまだ…」
隣でヒュ〜♪とご機嫌に口笛を吹く神威を肩パンした。
「太陽などとは程遠い…!
吹けば一瞬で消えるろうそくの火のような脆弱な光!それが貴様らだ!!
火種は消さねばなるまい!!その 鈍く光る光を!!」
その言葉に反応し、百華の頭が短剣を構えるが、サムライさんがそれをとめる。
「武士道とやらか。殊勝なことだな。己れ一人の命を捧げて女達の免罪を乞おうというのか。無駄だ。貴様がおわれば次は女達だ!!」
旦那はまだ笑っていた。血だらけでも息が切れそうでも。
それはサムライさんも一緒。
「消させやしねーさ。もう誰も。
たとえか細いろうそくの火でも集まりゃ闇も照らせる。
たとえ火が消されても一本でも火が残っていればまた火は灯せる。
お前にゃ 俺の火は消させねェよ」
不意に小さく地響きの音がした。
「何度吹き消そうとも無駄な話だ。俺にゃとっておきの火種があるんだ。絶対に消えねェ、太陽がついてんだ。
奴らがいる限り、俺ァ何度消されても何度でも燃え上がる」
少し感じた地響きは、大きなものとなり、吉原の天井が開いた。
「お前なんぞに、俺達の火は消せやしねェ」
カッとサムライさんの背後から光が灯す。
「!!」
「お前なんぞに、この陽は消せやしねェ」
「これは…!この陽は…!!
まさか…!!」
眩しい陽、感じたことのある夜兎の天敵。
「たっ…太陽ォォォォォ!!!」