第3章 吉原炎上篇
「獅子は縄張り争いに負ければ縄張りと共に己の保有する雌も明け渡す。
わかるか?貴様ら侍(まけいぬ)にはもう居場所もその手で女を抱く権利もありはしないのだ。
とっくの昔に、国も女も皆、天人のモノになってしまったのだから」
メキメキともっと力を込める。
「そう。この吉原も、吉原の女達も、日輪も、全てこの夜王のもの。奴等はわしの鎖に繋がれた飼い犬だ。どこにも逃げられはせぬわ。」
もっともっと、
腕に力を込める。
「敗者は敗者らしく指をくわえて見ておればよいのだ。
この国の女達が我等強者に蹂躙される様を。
先にいった弱者達と一緒にあの世でな」
『……甘いね。鳳仙の旦那。』
ブシィィ…!!
旦那の左目に刺さるキセル。
「なっ…!」
旦那の手から覗く赤い目。
「負けてなんかいねェよ。侍達(おれたちゃ)
今も戦ってるよ。俺ァ」
「きっ…貴様ァァァ!!」
左目を狙って足を蹴り上げる。
油断していた旦那は吹っ飛ばされた。
『…やっぱり。旦那は油断するとこうだから〜』
「…サクラ、どこまで分かってた」
『…お兄さんが反撃するトコまでは予想してたかな。…ま、地球人相手にあんなデッカい番傘振り回す時点でおかしいよね。
あの番傘の動きなんて簡単に詠めるよ。』
フフッと笑うと神威の隣に腰をおろした。
ウサギの模型に身体を預ける。
晴太がサムライさんと会話していた。
旦那はアレだしまだ起き上がれない。話すなら今のうち。
「母ちゃんと何も変わらない…みんなは…銀さんは…
オイラにとっちゃ大切な家族なんだよ!!大切なことをいっぱい教えてくれたかけがえのない人達なんだよ!」
涙を流しながら思いをぶつけるのは良いけど。…旦那、起きちゃうよ。
「それをこんな所に捨てていけっていうのかよ!!こんな所に見殺しにしていけっていうのかよ!!」
『……(サムライって、凄い)』
「………そいつが聞けただけで俺ァもう充分だよ。
行ってくれ。俺をまた敗者にさせないでくれよ」
「!ぎ…銀さ…」
晴太も、神威も、私も、目の当たりにする。
旦那の手によってサムライさんが血だらけになる姿を。
「銀さんんんん!!」