第3章 吉原炎上篇
「面白いではないか。」
旦那は羽織を投げ捨て、ウサギの置物に着地する。
「その絆とやらの強さ、見せてもらおうではないか。貴様がわしの鎖から日輪を解き放てるか」
銀髪の人は扉に刺さったままの木刀を取りに行く。
「わしが、奴等の絆を断ち切れるか…」
旦那は大きな番傘、サムライさんは木刀、二人同時に武器を引き抜く。
「勝負といこうではないか」
旦那は自身よりも大きな番傘を軽々と肩にかけてニヤリと笑った。
「この夜王の鎖、断ち切れるか」
銀髪のサムライさんは刀と木刀の二本持ちで旦那に挑む。
「エロジジイの先走り汁の糸で出来たような鎖なんざ一太刀でシメーだ。
明けねェ夜なんざこの世にゃねェ。この吉原(まち)にも朝日が昇る刻が来たんだ。」
旦那に向かってサムライさんは飛び込んだ。
「夜の王は日の出と共におネンネしやがれェェ!!」
「「おおおおお!!」」
旦那とサムライさんの一騎打ち。
『凄いね神威!あの銀髪のサムライさん!旦那の一撃止めたよ!』
「サクラ座って見たら?」
『いやぁ、興奮しちゃって…!』
「でも、夜王相手に10秒ももつなんて、コイツは面白くなってきた。」
『頑張って!お兄さん、終わったら一杯やろーねー!』
「俺も応援したくなってきちゃった」
「なめんじゃねェクソガキ共!10秒どころか天寿を全うしてやるよ。孫に囲まれて穏やかに死んでやるよコノヤロー」
「貴様の天寿など、とうに尽きておるわ。この吉原に、この夜王に、たてついた時からな」
旦那はふん、と力を加える。
ありゃー。あれは潰されるかもねェ。
また二人の一騎打ち。
サムライさんもなかなか手応えある。
『上、上、左。』
「…なに言ってるのサクラ」
『ん〜?旦那の動き。お兄さんに聞こえるように言ってんだけど、聞こえてないね。
上、右、
…目の前。』
サムライさんが壁に打ち付けられると、旦那は呼吸も与えずに顔を抑える。
遠くの方で晴太の心配する声も聞こえた。
「ありゃりゃ。もうおしまいか。ツマンないの」
『………』
壁に埋め込まれる頭に耐えきれぬかというくらい声を上げるサムライさん。