第3章 吉原炎上篇
「鎖を断ち切りにきたか。この夜王の鎖から日輪を…吉原の女達を解き放とうというのか」
「そんな大層なモンじゃねェ。俺ァ旨い酒が飲みてーだけだ。
天下の花魁様に ご立派な笑顔つきで酌してもらいたくてなァ」
すると、壁に寄りかかっていた神威が私の手を引いて旦那に近づく。
「こりゃあ面白い」
『凄いねこの銀髪の人。たかだか酒一杯のために夜王に喧嘩を売るなんて…』
「地球にもなかなか面白い奴がいるんだね。ねェ鳳仙の旦那。」
神威が旦那の肩に手を置く。
その途端、橋を支える一本の柱が旦那の手によって真っ二つになった。
折れた柱は銀髪の男の人に向かって落ちる。
「サクラ、こっちだよ」
手を握ったままの神威に引かれ、ウサギの置物に足を着く。神威は腰掛けた。
ケラケラと笑うアホ毛は足を組んだ。
「お〜コワッ。そんなに怒らないでくださいよ。」
『心配しなくても、もう邪魔はしませんよ』
「神威、サクラ、貴様ら何が目的だ。わしの命を獲ろうとした次は、童を手助けし日輪の元まで手引き、そうしてまでわしの邪魔をしたいのか」
それとも…
「母を求める童の姿を見て遠き日でも思い出したか。」
『…旦那、やめてください』
「病の母親を捨ててきたお前が、父母共に何者かに殺されたお前が、罪滅ぼしでもする気になったとでもクク…」
「……フッ何を世迷い言を。夜王を腑抜けにした女、一体どれ程の女かと思えば…ボロ雑巾に縋る、ただのみじめな女とは。」
『ふん。吉原の太陽が聞いて呆れるね。』
「違うんだよ。俺の求めている強さは。こんなしみったれたものじゃない。」
『神威はお父さんでも構わず殺す奴よォ。皮肉だよね。』
「血が繋がっていても妹を殺そうとする兄貴もいりゃ、血は繋がっていなくとも母子より強い絆で繋がってる連中もいる。
どっちが本物の家族かなんて知りゃしねーがな」
『へぇ。いい事言うねぇ!銀髪のイケメンお兄さん!事が終わったら一杯…あいたッ!神威痛いから!』