第3章 吉原炎上篇
「俺は子供は殺さない主義なんだ。この先強くなるかもしれないだろう?…おいでよ『どうぶ○の森』殺しちゃ『ごめんなさい』」
「…君も笑うといい。お母さんに会うのにそんなシケた顔してちゃいけないよ」
「こ…ここに母ちゃんが」
「八年前、君を逃がそうと吉原から脱出し、鳳仙に捕まった時から君の自由と引き換えに日輪は自由を奪われた。」
『…花魁なんて名ばかりのただの飾り。』
「鳳仙は日輪を客寄せパンダとして使う以外はここに閉じ込め、客もとらせず一切の自由を認めなかった」
『ここで腐って死んでいく事を日輪に強いたんでしょ…あ、違うか。日輪自身がそれを選んだと言っていいかも。』
『「君を、護るために」』
「それでも君はここに来た。日輪が君を護るために長年耐えて来た辛苦も覚悟も無駄にして危険を冒してまで。」
『それでも日輪に会いに来た。晴太にも晴太の覚悟があるんでしょ』
「ここから先は君の仕事だよ」
そっと扉に手をかけようとする晴太。でも、
「帰りな」
綺麗なしっかりとした声が聞こえてきた。
「ここにアンタの求めるものなんてありゃしないよ。帰りな」
神威と顔を見合わせて苦笑いをする。
「かっ…母ちゃん!!母ちゃんなのか!!」
鍵替わりとなっていた板を外し、扉を開くとまた鍵がかかっていて、晴太は扉を揺らす。
「開けてくれよ!オイラだよ!わかってんだろ!アンタの息子の晴太だよ!!」
「私に息子なんていやしないよ。あんたみたいな汚いガキ知りゃしない」
「なんで汚いガキって知ってるんだよ」
晴太が日輪を買うために盗んだお金。そのスリを上からちゃんと見てた日輪。
貧しい晴太が不幸だと思っていたのは間違い。
自由を奪われた日輪の方がもっと不幸。
ずっと気づかなかったこと、
「母ちゃんが、ずっとオイラのこと護っててくれてたなんて」
「…」
「今度はオイラの番だ。」