第3章 吉原炎上篇
ククッと旦那は笑った。
「反目し、殺し合いを演じたと聞いたが血は争えんな」
神威の見開かれた目。
「神威、その目は奴の目。…その昔夜王と呼ばれ夜兎の頂点に君臨した儂に、唯一恭順せず、たった一人で挑んできた男。
ぬしが父、星海坊主の目。」
旦那の言葉では、神威の父は旦那と三日三晩に渡る打ち合いをし、決着がつかずに星海坊主の「あの、ウンコしたいんだけど」で終了したらしい。
バカだ。あの人もバカだ。
「神威、貴様に父が越えられるか」
「もうとうに越えてるよ。」
神威はいつもの笑顔に変わり、旦那を見る。
「家族だなんだと、つまらないしがらみにとらわれ、子供に片腕を吹き飛ばされるような脆弱な精神の持ちに主に真の強さは得られない。」
『そう思えば…旦那、貴方も星海坊主と似てるのかもね。』
「外装はゴツくても中身は酒と女しかない」
旦那と神威、静かに戦闘態勢をとった。
それを見て私は神威から一歩離れる。
『真の強者とは、強き肉体と強き魂を兼ね備えた者…』
両者共に脚を踏み出した。
「何物にもとらわれず、強さだけを求める俺にあんた達は勝てやしないよ」
「ぬかせェェ!!小童ァァ!!!」
「やめろォォォ団長ォ!!」
ドォォオオン!!
窓が見事に壊れ、二人が打ち合いながら姿を現す。
お互いピッタリに頬を殴り合うと、床を擦りながら離れる。
『神威さ〜〜ん。そろそろやめた方がいいんじゃないですかね〜?』
「よせ!サクラ!」
ホイホイと神威に近づいたのが運の尽き。
めこっ!
『…あり?』
自身の下半身が床に埋まってる。
「ひっこんでてよサクラ。今、楽しいところなんだ。邪魔すると、殺しちゃうぞ」
『えぇ〜!神威さーん!』
「言わんこっちゃねェ。あーまた始まっちゃったよ。団長の悪いクセが…」
普通の人では防げない速さの打ち合いに、阿伏兎はなかなか二人の間に出れない。
私は埋まった下半身を抜きだし、阿伏兎の隣に立った。
「ああなるともう、誰にも止められねェ」