第7章 ユウガタのウサギ
『まっ こんな感じかなー』
私と神威は船内の長い廊下を歩いていた。
『それからは、んー。阿伏兎に連れられて春雨で過ごしてきたわけ。Red featherのこともその時知ったんだ』
「じゃあサクラは元から強かったわけじゃないんだね」
『そーいうこと。だから第七師団より第零師団の方が比較的任務に行かないからそこに入団されたしねー』
「じゃあ俺が第七師団に入った時のこと知ってるんじゃないの」
『んにゃ、知らん!』
「即答どうもありがとう」
私の自室の扉を開けた時、神威がフッと笑った。
『え、なに、いきなり笑ってんの』
「いや、サクラがそこに立つ所、久しぶりに見たなぁっと思ってさ」
『私はもうちょっと地球にいたかったんだけどなぁ』
「もしまだあの場所に残っていたなら、今頃阿伏兎と一緒に後処理してるんだよ」
『それは勘弁!』
Red featherの男を気絶させた後すぐに阿伏兎達が突入してきて事はあっという間に片付いた。そして私は游燐に頭をチョップされた。痛かったな…
チョップされた頭をさすりながら自室へと足を踏み入れた。
手に持った番傘をクローゼットにしまい、ついでにマントも掛けた。
「サクラ」
『ん?』
「サクラ」
『どーしたの?』
「サクラ」
『だから何よぅ。そんなに呼ばれると恥ずかしいってば』
「好きだよ」
私は神威に背を向けたまま止まった。
「伝えようって、思ったんだ。」
『…』
「サクラは、『神威』…なに?」
『私はね、戦うことでしか、感情を伝えられないんだ』
"…愛する方法も、憎む方法も、戦うことでしか表現できません。夜兎というのは。"
肩が震える。ポタリと私の足元に涙が落ちた。
「サクラ…」
『……もっと素敵な人いっぱいいるよ。
っ私なんか、途中で飽きちゃうかもしれない』
「…でも、サクラがいいんだ
隣にいてよ。俺の隣で、笑ってよ」
『……うん、喜んで』
神威に胸の中はとても暖かかった。
【ユウガタのウサギ END】