第3章 吉原炎上篇
その後阿伏兎に教えてもらった。旦那のお気に入り花魁ちゃんの名前を。
『へぇ。吉原一の花魁、日輪かぁ。その人を鳳仙の旦那は大事にしてんだね。』
そんな事を呟きながら吉原を歩いた。
吉原の中で一際大きな建物、その一角の部屋の中では鳳仙の旦那が花魁を後ろに二人つけていた。
一人は三味線をひき、一人は鳳仙の旦那に酒をついでいた。
「これはこれは。珍しいご客人で。」
鳳仙の旦那の前には、団長と私。
「春雨が第七師団団長、神威殿」
ガツガツと山盛りあったゴハンを平らげる神威。
隣の花魁ちゃんが酒をつごうとしても、見向きもせずにゴハンだけ食べる。
「んーやっぱり地球のゴハンはおいしいネ。鳳仙の旦那。」
『バカだ。この人バカだ。』
「第零師団団長、サクラ殿と共に足を運ぶとは。これも珍しいこと。」
『…お久しぶりです。鳳仙の旦那。』
旦那に向かって座りながら頭を下げる。
「春雨の雷槍と恐れられる最強の部隊第七師団、それを訓練付ける第零師団…。若くしてその長にまで登りつめた貴殿達が、こんな下賤な所に何の御用ですかな。」
その言葉を聞いて神威がピタッと箸を止める。
そしてケラケラと笑った。
「人が悪いですよ、旦那。第七師団を作ったのは旦那でしょ」
『第零師団も、ですけどね』
「めんどくさい事全部俺に押しつけて、『処理してるの神威じゃなくて、阿伏兎ですけどー。』…自分だけこんな所で悠々自適に隠居生活なんてズルイですよ」
『…人は老いれば身も魂も渇く。その身を潤すためには隠居生活なんて、「サクラもパジャマ生活してるじゃないか」…魂も潤すのには必要ないのでは?』
神威の殺し作法の笑顔vsサクラの脅し作法の真顔 ファイ!
「身や魂を潤すのは生活ではない。その身を潤すのは酒。魂を潤すのは女よ。…フッ若いぬしらにはわからぬか」
『「いえ、わかりますよ」』
バチっと神威の目と私の目があった。