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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第9章 火影 磯影 木偶の坊


「丁度良かったよ、アンタに聞きたい事があったんだ」
窓から里が展望出来る。里の向こうには、歴代の火影像。
いつも活気ある里だが、今日は心無し静かな気がする。磯の里人がひっそりと身を移してきたという実状を知っているせいだろうか。
綱手は政務室の卓に肘をついて、窓から目を反らした。
「何せアンタらは忙しいからねえ。うろちょろうろちょろ落ち着きがない。アタシも今はこの身の上だ。そうそうちょいと聞きたい事の為に出歩いたり出来やしない」
「恙無く御勤めになっておられるようで何よりです。ご多忙とは言え相も変わらずお健やかなご様子、よろしゅうございました」
「相変わらず人を食った物言いをするねえ。あんまり逃げ隠れしてると口が曲がって来るのかい、四代目」
「それは私の肩書きではありませんよ。里が土地を捨ててから、磯に影はおりません」
「フン。そりゃアンタらが決めた事だろ。周りからしたら、やっぱりアンタは四代目磯影だよ」
「乱暴を仰いますな。それは木の葉が火影と決めたところで、周りからすれば貴女はやはり蛞蝓綱手姫だと言うようなものですよ」
「・・・そう呼ぶな」
「互いに意思を尊重しあうのは良好な関係を築くのに欠かせない事ですよ、蛞蝓綱手姫」
「磯の連中と話すとどうも話がたわむ。今はお前と言葉遊びをしている場合じゃないんだ、四代目波平」
「・・・今ナミヘイと仰いましたね?私の名は波平と書いてナミヒラです。厳しい割に子供の教育に関しては七割がた失策を犯している国民的禿げオヤジと一緒にしないで下さい。私にそのネタを振ると三日三晩はネチネチと日曜六時半の話しかしなくなりますがよろしいか?貴女の聞きたい事とやらは、それこそそんな話をしている場合じゃない話題として四日目の朝まで放置の憂き目を見ますね。厳重放置ですよ」
「ははは、悪かった、四代目。悪かったよ。ついからかいたくなった。すまなかったね。だけどその名に比べれば四代目と呼ぶのは差し支えないだろう?立場のせいかねえ、公務中はその方が収まりがいいんだよ、許せ、波平」
「大国の影を勤めるのも難儀な事だ。病膏肓に至る、それは完全に職業病ですよ。そこまで仰るならどうぞご随意に」
茫洋とした容貌で常時読めない表情を浮かべているこの男、四代目磯影浮輪波平。食えないが愚かではない。この波平の父三代目磯影浮輪破波が磯を流浪の里と定めた。

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