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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第7章 磯から暁へ


深水がカブトの側についている。
「成る程」
鬼鮫はさして驚かなかった。裏切りに寝返り、二重スパイ、・・・仲間殺しでさえ、目新しいものではない。
「ふん、深水さんはあなたの味方、ねえ・・・」
鬼鮫は鮫肌を肩に担ぎ上げ、底意地の悪い同情の顔でカブトに頭を振って見せた。
「では深水さんは、あなたと待ち合わせしていたのにたまたま"敵"である筈の私を見付けてすっかりはしゃいでしまい、あなたとの用をまんまと忘れてたしまったと、そういう事ですか。気の毒に、いくら相手が壮年の男性とはいえ、蔑ろにされるのは寂しいものでしょう・・・何だかすいませんねえ・・・」
「・・・凄く楽しみしてたのに可哀想みたいな言い方は止めてくれないかな?」
「可哀想ってえか、馬鹿っぽいな、うん」
「・・・君は黙ってろよ」
「アンタなんかと話しても詰まんねぇけどな、黙ってたらもっと詰まんねぇだろ、うん?それとも楽しませてくれんのかァ?カブトォ!」
懐に手を突っ込んだかと思えば止める間もなく新作を放ち、デイダラは凄いような笑顔で印を結んだ。 些か不恰好な白い鳩らしきものが、カブト目掛けて飛んで行く。
「ハッ、馬鹿の一つ覚えが・・・!」
横様に跳びながら打ったカブトのクナイが、鳩型の起爆粘土に呑み込まれる。
カッと鋭い光が弾け、飛び散った小さな起爆粘土が何十もの小さな鳩に化けて四方からカブトに襲いかかった。
「何・・・ッ」
「誰が馬鹿の一つ覚えだァ!うん、こらぁ!」
飛び上がって攻撃を避けたカブトに、デイダラが懐の二体の新作を更に差し向けようとしたとき、地響きが起こった。
「うん?何だ・・・?」
森の奥がボンと盛り上がり、巨体が現れた。鳥が飛び上がり、木がめきめきと折り倒れる音がここまで聞こえて来る。
「・・・倍化の術・・」
「・・・・・ッ」
鬼鮫が呟いた刹那、カブトが地面を一蹴りして深水に飛び付いた。首にかかっていた掛守を引き千切り、距離をとって木の上に立つ。
「こんな泥棒みたいな真似はしたくなかったけどね。まあ、用がすんだからボクは行くよ」
掛守を自らの首にかけて、カブトはにやりと笑った。
「木の葉のネズミが動いてる。ぐずぐずしてると群れに捕まるよ」
起き上がりかけて鬼鮫に背中を踏みつけられた深水に顎をしゃくり、
「深水さんによろしく。お互い手ぶらは免れて良かったよ」
カブトは消えた。
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