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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第5章 行き違い


磯の里が今木の葉との協定においてその保護下にある事は、他国に知られていない。
木の葉は現火影の方針により医療忍術に重きをおいている。無論医療に薬は欠かせない。
磯の里と協定を結ぶ話は前々から火影内で持ち上がっていたが、かの里の地味さや臆病さが災いして今一つ議論の熱をあげず、結論は長く膠着していた。
木の葉という強国には他に早急に話し合うべき議題が多くある。
しかし、磯の里が音の里と接触を持ったと
いう情報が、先延ばしにして出さないでいた方針に大きな影響を与えた。
今磯の里には、里の警護と木の葉との連絡員としての任務を負った木の葉の忍が常在している。

そもそも磯の里は、他の目に留まらぬよ
う、目立たぬよう、ひっそりと逃げ隠れる旨を持って存続してきた弱小の一族だ。
先の大戦で大国に呑まれそうになり、流浪の道を選んだのも里の性格からして至極自然な流れであり、事が起こらずともいずれは自ずから流浪するようになっていたかも知れない。
長い歴史においても、他国との公的交渉を持たず、本草の知恵と技を生業にしながら僅か百人程の里人の数を増やしも減らしもせず、細々と暮らすその生態は、絶滅しそうなのに存在が知られていない為絶滅しそうな事にも気付かれない、地味で臆病な絶滅動物の生態同様、あまり余人に知られていない。ただ一つ、大戦中の噂が知る人ぞ知る形でひっそりとあるだけだ。
その磯の里人である牡蠣殻の特異体質に目をつけた音の里、ひいてはカブトの目敏さは、彼の仕事に対するマニアックな情熱をよく表している。医療オタクの面目躍如といったところか。

牡蠣殻の止まらない血には、使い途がある。病ではなく体質である由縁である。

音の里は、一度の襲撃で身を潜めた。
ーそのしたたかさ。

自覚なき静かな渦中にある磯の里に今、暁が向かっている。
事態は地味にややこしくなっていた。


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