第4章 文通
鬼鮫は顔をしかめて、コツコツと湯呑みの縁を爪で鳴らした。
「何があったんでしょうねえ。急に連絡が欲しいなんて」
「心配か?」
「まどろっこしいんですよ。来るか来ないかわからない手紙でやり取りするのは。全く、土鳩の後でもつけられれば、いちいち要説明なんて下らない返信を書く必要も・・・・」
言いかけて鬼鮫は口を噤んだ。
お茶を呑みかけていたイタチも湯呑みから口を放して顔を上げる。
「そう言えばいましたね、鳩の追跡が出来そうなのが」
「頼めるのか?お前が、あいつに?」
イタチの懸念に、鬼鮫は事も無げに手を振って答えた。
「頼まなくていいんですよ。事情の触りを聞かせてやりさえすれば、好奇心に逆らいきれずに御輿を上げるでしょう」
「話すのか」
イタチは意外な思いで鬼鮫を見た。
「別に隠してた訳じゃなし、いずれ知れる事でもありますし、高く売れるうちに売って損はないでしょう」
鬼鮫は肩肘を椅子の背にかけた格好で、ふ、と、笑った。残ったお茶を呑み干し、湯呑みをカツンと卓に伏せる。
「さて、一年ぶりの再会と行きますかね」