第26章 シカマル受難
「・・・あの牡蠣殻て人、一体何本吸ってんだ?戻って来ねえな・・・」
目の前でジャンジャン焼けては消えていく肉を、呆れを通り越したぼんやりした目で眺めながらシカマルは三杯めのお茶を啜った。一回に五切れの肉を口に放り込んだ藻裾が、次の肉を鉄板に並べながら元気よく返す。
「さあぁ、あん人も一人で何やってっか知れないからねえ。ヘボヤンやら魚のアニさんやらいつの間にか変なのと連んでるし。まあ、元々変な人スから吸ってるうちに入っちゃって次元大介かなんかになりきって六十本とかいってんじゃねえスかァ?ダハハ!知ってますかィ?あの帽子のオッサン、一日六十本吸うんスよ?吸えるかそんなに?無理じゃね?てか六十本煙草吸うってどんだけ暇?泥棒してる時間ねえじゃん。ないわぁ。もォいい加減誰か突っ込んでやれっての。それって実は禁煙パイポ?くれえ言ってやれっての。ルパン始まってから四十八年だよ!六十本吸うって言い出して、四十八年!引っ込みつかなくなって四十八年!突っ込み待ちで四十八年!ハチ公でもそこまで待てねえっての。しっかしさ、いやー、ハチ公待たせンのにマジでリチャード・ギアとかありえねえスよね!?あんなん渋谷駅からご主人面して現れたら、待ち構えてたハチ公が白目剥いて失禁するわ。ワーオっつってビュゥゥトランスゥ~レエェイショオォォン!!!ん?犬だから普通か?別にいいのか。何だ、詰まんねえですねえ」
「・・・飯食いながらする話じゃねえだろ・・・もう、突っ込むのもメンドくせェ。波平さん、アンタ何とかして下さいよ。アンタんとこの保護動物でしょうが、これは」
「いや、もうすぐ保護下を離れるから。藻裾は元々野性動物ですしね。そもそも保護出来た事などありましたかねえ・・・。全く覚えがない」
「・・・いいのか、そんなんで?間違いなくあちこちで迷惑かけてるぞ、コイツは」
「間違いない事を確認しなくてもいいじゃないですか。百点の答案用紙はそっと胸に仕舞っておくのが粋ですよ」
「要らねえ、そんな百点」
「いいじゃないですか。百点」
「要らねえ百点もあんだよ!オレも初めて知ったわ!0点でいいからもう帰らせろ!」
「うるせえぞ、バンビ丸。静かに食わせろ、食った気しねえだろ!?」
「一番うるせえのはアンタだっつの!食った気しねえ?見てるだけで腹が弾けるくれェ食ってんじゃねえか、いつまで食ってんだ、オメエは!?」