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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第25章 犬も喰わない・・・・


離れかけた手をとって鬼鮫は溜め息を吐いた。
「ちゃんと効くんでしょうね、これは」
「さあ?試してみたことがないのでわかりません」
「・・・また無責任な・・」
「まじないはそういうものでしょう?まあ要は信じる気持ちですよ。鰯の頭も信心です。ははは」
「・・・この手をねじ切ってやりましょうかねえ・・」
「効きます。ばっちりです。ブードゥ教並みに効きます。丑の刻参りも真っ青です」
「それは呪いでしょう・・・。あなた本当に馬鹿ですね・・・」
鬼鮫は牡蠣殻の手を離して外を眺めた。
「散開には立ち会うんですか?まあ、あなた信じられない事に浮輪さんの補佐役らしいですから、立ち会うんでしょうね」
「いえいえ、無断で他出した私がこのタイミングで現れたらまた長老連と揉めますので、公の場には行けません。波平様も言ってらしたでしょう。呑みに戻るのでなければまた会おうと。どこかから見ているか、先にたつか。これきり会えない訳でなし、さ迷って居場所が知れないのはいつもの事、動き続けるのが常の磯は別れを別れとは思いませんから」
牡蠣殻はサバサバと笑った。
「また会えますよ」
「あなたが生きていればね」
「やれば出来る女ですよ、私は」
「あなた、大蛇丸がどういう男か知っていてそんな能天気な事を言ってるんですか?
あなたが束になってやる気を出したって何とかなるような相手じゃありませんよ」
「多分今も網を張られているんでしょうね」
「そのおめでたい頭でよく考えてごらんなさい。事が始まってもう一年、あなたはその血を通じて音の罠に捕らわれていた様なものなのですよ?今更手を引く理由がない。大蛇丸もカブトも性がしつこいですから。・・・何日かだけでも私といなさい。取り合えず音をまいてあげますよ。わかりましたね。決まりです」
「はあ、何日か・・・じゃ、暁へ行きますか?」
「暁は放っておきなさい。今あそこに戻ったらまくものもまけません。私達に面識がある事はカブトも承知していますからね」
「ならどこへ?」
「黙ってついてくればいいんですよ。余計な事を知ると余計な事を漏らす可能性が出る」
鬼鮫は立ち上がって寝台横に置いてあった荷を掴み上げた。
「出ましょう。小規模で変わり種とはいえ一つの里が散開するのです。騒ぎに乗じやすいのは狙う方も狙われる方も同じ。用心するに越した事はありません。先手を打ちますよ」


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