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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第25章 犬も喰わない・・・・


「干柿さん」
牡蠣殻が鬼鮫を見上げた。
「表に出ませんか。悪目立ちし始めてます」
鬼鮫は牡蠣殻の腕をとって歩き出した。
「何処まで行くんですか?」
どんどん店から離れて行く鬼鮫に引かれて牡蠣殻は当惑した。
「話の出来るところまで」
「・・・そりゃどこの事です?」
「私が納得出来るところの事でしょうね」
「だからそりゃどこの事なのかって聞いてるんです。放して下さいよ」
「また消えるつもりでしょう?今度やったら躊躇なく殺します。覚悟しなさい」
「話したって聞きゃしないから逃げるんです。理由なく逃げ回ってんじゃありません」
「暴れるのは止めなさい。当て身を食らわせて抱えて行きますよ?」
「落ち着きなさい、干柿さん・・・て、何で宿屋?部屋とってんですか?は?貴方木の葉に何しに来たんです?か、観光?」
「木の葉での角都の定宿ですよ。連中が動いたらすぐわかるように部屋をとりました。私がいると知れば、少しは抑止力になろうと思いましてね。あなた、飛段に報酬を払いましたか?」
「いえ、まだ・・・」
「フ、でしょうね。しかし、今そんな事はどうでもいい。あなたは今回ひどく私を怒らせましたよ?わかってますか」
「今までだって伊達や酔狂で怒ってたんじゃないでしょう?冗談で人を小突き回してたんですか?そうだとしたら私だって怒りますよ」
「腹が立って仕方ない。どうしてくれましょうかね」
「部屋が上階なら始めに言って下さいよ!階段が長いッ!」
「失せてばかりいるから体力がつかない。入りなさい」
腕を掴んだまま部屋のドアを開けて牡蠣殻を睨み付ける。牡蠣殻も眼尻を上げて鬼鮫を睨み返す。
「厭です」
「入りなさい!」
「誰が入るか。絶対に厭です」
「・・・この、バカが・・・ッ!」
鬼鮫は牡蠣殻を小脇に抱え込んで部屋に踏み入った。
「・・・クソ、放せ、ってんですよ・・ッ!」
牡蠣殻が鬼鮫の膝に足を絡めて跳ね上がるように背を伸ばした。抱え込んだ腕が弛んだが、膝を封じられているために体勢が崩れて踏ん張りが利かない。牡蠣殻は転げ落ちるように逃れると、床に手を着き三白眼を剥いて鬼鮫を睨み付けた。
鬼鮫はドアを閉めてそこに寄りかかった。
「韜晦とはどういう事です?」
「姿を隠すって事でしょう」
「誤魔化すんじゃありません。説明しなさい」
「何言っても聞く耳持たないような人に説明しても意味ないですよ」
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