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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第22章 取り敢えずの円団と屈託のある別れ


「イタチ、オメエ帰りはどうする?乗ってくか?うん?」
デイダラの声がする。
「・・・磯辺さん、戻ってくれるのかしら。そうならば嬉しいけれど」
「戻るだろう?戻らなくてどうする。牡蠣殻はまず、波平様にお詫び申し上げねばならない筈」
鬼鮫は踏み出した足を止めて、深水と杏可也を顧みた。
「そうならばいいわねえ・・・」
杏可也が嫋やかに微笑んで鬼鮫を見返した。鬼鮫は薄く笑って杏可也に向き直る。
「なかなか食えない人のようだ。さてあなたが誰にあの人を与えたがっているのか知りませんが、私は一度捕らえたものは逃がしませんよ。あの人は私のモノです」
「それは妄執ではなくて?あなたは磯辺さんを知らない」
「わかろう筈もない事を安易に言い切らない方がいいですねえ。あなたもまた私と牡蠣殻さんを知らないでしょう」
「そうね。あなたの事は存じませんね。でも磯辺さんは知ってますよ、あなたよりずっと」
「だから何ですか?それが何か?」
鬼鮫は冷たい目色で杏可也を見下ろし、深水に顔を向けた。
「大した細君ですねえ。深水さん、あなたを見直しましたよ」
「いや、干柿さん、正直話が見えませんな・・・何で牡蠣殻の話で二人がもめなければならないのです?」
戸惑う深水に鬼鮫は皮肉この上ない顔を、杏可也は穏やかながら有無を言わせぬ顔を向けた。
「わからないならお黙んなさい」
「・・・はい」
「どちらにしてもね、干柿さん?磯辺さんを助けられるのはあなたと旦那様に限った事ではないの。安心していては足元をすくわれましてよ?」
杏可也は鬼鮫の胸元を眺めて笑顔を浮かべた。
「ご心配なく。私は彼女に害意を以て親しみを覚えていますのでね。月並みの懸念は要りませんよ」
鬼鮫は懐を覆うように腕を組んで微笑した。
「誰が鳥の雌雄を知ろうか。・・・以後口出し無用に願いますよ。私は気は短くないが穏やかな質でもない。ご存念頂きたいものですね、お互いの為に」
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