第22章 取り敢えずの円団と屈託のある別れ
「あ~、メンドくさそうなのと居やがるなァ、うん・・・」
眼下に藻裾と他に二つの人影を認めてデイダラは舌打ちした。
「しっかしピンピンしてやがる。やっぱ化けモンだな、アイツ・・・」
「無事だったようですね。運の強い事。藻裾らしい・・・・良かった」
杏可也はホッと息を吐いて、胸と下腹を押さえた。
「何だ?痛えのか?大丈夫か?」
デイダラがギクリとしてドギマギと声をかけるのに、杏可也は首を振って笑った。
「いいえ。フフ、藻裾ではないけれど、安心したらお腹が減りました。可笑しいですね」
朝の陽射しを受けて杏可也の柔らかい顔は輝くように白さを増して、穏やかに美しい。デイダラはじっと杏可也を見詰めてサバサバと笑った。
「ほんのちょっとの間だけど、オイラ、アンタに会えて良かったよ、うん」
降下を始めながら、何度か頷く。
「いつかアンタみたいな観音像を造ってみてえな。うん。もっとオイラの腕が上がったら、きっと造るな。そしたらさ、アンタ見に来いよ。アイツや牡蠣殻や、フカのオヤジなんか連れてさ、うん」
「あら、素敵。きっとですよ、デイダラさん」
「あぁ?」
デイダラはポカンと杏可也を見た。
「・・・ダラダラじゃねんだ?アンタも結構人が悪いな!」
「フフ。デイダラさん、本当にありがとう。とても感謝していますよ。子供が産まれたら見に来て下さいな。産まれる前に空を飛ぶなんて、きっとやんちゃなお子が産まれるわ。ねえ」
「アンタらは面白い親になるだろうな、うん」
デイダラはにやりと笑うと改めて人影に目を凝らした。
「砂漠の我愛羅がいやがる。傀儡使いの兄貴も一緒だな。どういうこった・・?」
「私の甥っ子達ですよ。報せを聞いて出迎えに来てくれたのかしら?綱手様の周到な事・・・」
「アンタ意外な身内持ちだな。しかし周到はいいけどメンドくせえ。降り辛えぞ」
「あら、どうして?」
杏可也の問いにデイダラは口ごもった。
「ん・・・まあいいや。アイツが何かわめいてるしな。ぐずぐずしてたら食われそうだ。降りるぞ、腹に気を付けな」
「おせェぞチビィ!」
藻裾の声がする。デイダラは苦笑した。
「まだ言いやがる、あのバカ」
「口が悪くて申し訳ありませんね・・・」
「もういいよ。オイラだって褒められたモンじゃねえしな」
デイダラはにやりと言って、怒鳴り返した。
「退けサル、ぶっ潰すぞ、コラ!」