第19章 降り落ちる災難
「うるさいぞ、カンクロウ。人が物を食べているときは話しかけたりして邪魔をするな。・・・ところでさっき言っていた探し人の事だが・・・」
「お前も話しかけてんじゃん」
「俺はジャーキーをやったからいいのだ」
「この人はジャーキーくれたからいい人だ」
「・・・ああ、帰りてえ・・・」
「帰れ帰れ。帰ってクソして寝ろ」
「・・・そういう言葉は感心しない。カンクロウ、用が足したければ物陰へ行け」
「誰がトイレに行きたいって言いましたかァ?」
「なら黙っていろ。今はこの人に話がある」
「そうだ、黙ってろ、ジャンジャンうるさいぞ、ジャンジャンは」
藻裾はキリッと呆れ顔のカンクロウに言い置くと、我愛羅に顔を向けた。
「探し人が何か?心当たりありですか?」
「いや、もしかして観音様のように美しいというのは、俺達が迎えに来たのと同じ人ではないかと思ったのだ。杏可也という女性なのだが」
「ビンゴだ。杏可也さんのお知り合い?」
「甥だ」
「へええ、てコトは、おたく、もしかして砂漠の我愛羅?あー、瓢箪しょってるね。今気付いたよ。御大自らお出ましですか。ご足労様です」
藻裾は食べ終わったジャーキーの袋を懐に仕舞って、空に目を向けた。
「杏可也さんとはついさっきまで一緒だったんですが、不測の事態ではぐれちゃいましてね。チビだけど満更使えなくもない男といるんで、すぐ現れると思いますよ」
言う側から大きな鳥影が上空をよぎった。旋回しながら着地する場所を探している様子だ。
「誘導する。行こう」
我愛羅が動いた。藻裾も続いた。
カンクロウは頭を掻いて、しぶしぶ二人の後を追う。
「・・・たく、クソ」
「カンクロウ、用が足したければ・・・」
「その用はねえよ!」
怒鳴り返して溜め息を吐く。
「厄日中の厄日だぜ、勘弁してくれ・・・」