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連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第2章 遂行しづらい任務


今回の任務は、護衛だ。
ただし、イタチも鬼鮫も相手の事を知らない。
磯の里という至極小さな、一言で言えば弱小な忍の里がある。規模も戦力も高のしれたこの里は、ただ一つ本草の道に明るく、人の体に害する事も益する事も、野草を用いて巧みにする。
しかし先の大戦の最中その知識を狙って他の大国に目を着けられ、この里は里ごと雲隠れした。元からさして多くはない一族で流浪の身になったのである。
温厚篤実でありながら排他的、里の特色を考えれば無理もないが異常な用心深さ、そしてそれから派生した逃げ足と隠れ身の巧みさ、今回護衛を依頼してきたのは、そういう相手だった。
「それにしても相手がわからなくては護衛の仕様がないでしょう。間の抜けた依頼ですねえ・・・」
一夜明けた朝食の席で、鬼鮫は呆れ顔をした。
「護衛される本人に拒否権があるという事だ。逃げ足と隠れ身が巧みとなれば、意に添わぬ護衛から逃げ出してしまう」
「馬鹿馬鹿しい。放っておいたらいいんです
よ、そんなのは」
「何やら特異体質らしい。傷をつけるなという厳命が出ている」
「特異体質じゃなくても傷なんかつけやしませんよ。護衛なんですから」
「些細な傷も避けるように言われている。かすり傷も深爪も、打ち身も駄目だ」
イタチは眉をひそめて依頼書から顔を上げた。
「・・・・面倒ですねえ・・・。気に入られなければもっけの幸いじゃないですか」
「いや、その分報酬が飛び抜けていい。角都と血を見るやり合いになりかねない」
「は。馬鹿馬鹿しい」
椅子を引いて立ち上がりながら、鬼鮫は鼻を鳴らした。
「なら角都が自分で出張ればいい。張り切って務めるでしょうよ、彼なら」
「依頼人に決定権があるのに飛段はまずいと思わないか?」
「成る程。イタチさん、お茶のおかわりはいりますか?」
「ああ、頼む」
多くの宿がそうであるように、ここも朝食は食堂でのセルフサービスになっている。閑散としているという昨晩の印象と打って変わって、朝の食堂はそこそこにざわめいていた。
ただ、そこに牡蠣殻の姿はない。
"顔を合わせないという話を綺麗に鵜呑みにしましたか。思った程の馬鹿ではなくて何より・・・"
「ところでその御大層なお相手にはどう接触するんですかね?取り合えず会わない事には話にならないでしょう」
卓に二人分のお茶を置いて、鬼鮫はイタチの向かいに座り直した。
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