• テキストサイズ

連れ立って歩くー干柿鬼鮫ー

第12章 浮輪波平


「波平さんの分は?」
「お前たちが折半」
「何言ってんですか。ヤですよ」
「そうか、いやか。まあ行こう」
「駄目駄目駄目、まあ行こうじゃない。こういうの始まると、絶対最後にはアンタの思い通りになっちゃうじゃないですか。俺は出しませんよ」
「そうか、出さないか。よし行こう」
「波平さん・・・」
「安心しなさい。私は小食だ」
「食べなくてもザルでしょ、アンタは」
「そうか、カカシは行かないのか。残念だな」
「行かないなんて言ってないですよ、ちょっと波平さん」
「客舎の夕飯は断るつもりだったが、お前が代わりに食べるといいな。さ、食堂に案内しよう」
「ヤですよ、何が楽しくて俺だけ客舎で飯くわなきゃないの・・・」
「行かないんだろう?」
「行きますよ」
「そうか、それは良かった。じゃあ行こう」
「出しませんからね?」
「誰もお前の腹など見たくない。しまっておきなさい」
「腹の話なんかしてないでしょうよ」
「腹は空いてないのか。お前も大人なんだから間食は程々にな」
「・・・これだよ・・・」
カカシは眉尻を下げて、先に立って振り返りもせずに歩いて行く波平の後ろ姿を見た。
「奢った分だけは話を聞かせて貰いますよ」
小走りで傍らに追い付いたカカシに、波平は頷いた。
「私に鳩の蘊蓄を語らせると長いぞ。日曜六時半の話に次ぐ長さだ」
「あのねえ・・・」
脱力するカカシに頓着なく、波平は空の月を見上げた。
「・・・満月だ。明るい夜は衝動を誘うと言うが、何という事のない夜になるといいな」

/ 249ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp