たたらシンフォニックオーケストラ~刀剣男士のための
第7章 大いなる約束の大地チンギスハーン
パチン、と心地好い音が店内に響く。すると注川守のやや後ろ、何もない空間が歪み、黒髪の青年が現れた。
その青年は注川守と同じような紅い公家衣装を身に付けており、そよ風のような波動を発していた。
ほとんどの捜査員は驚き、腰を抜かす者までいたが、寺町は自然と落ち着いていられた。何故なら、
「お前…バイオリンに宿ってた…照誠とかいう奴なのか?」
本丸の調査書に顔写真と共に 「短刀巨大化の仕掛人…いや仕掛神」とデカデカと載っていた人物だからだ。
すると、照誠は軽く自分たちに軽く会釈をしてから、注川守に向き直り、
「注川守様。お久しゅうございます」
「あ~はいはい。久しゅう、久しゅう。よし、もう帰っていいよ。」
一方的に呼び出され、一方的に帰れ、と命令されているのに照誠は嫌な顔一つせずに、
「失礼致します」
と、頭を深く下げ、登場と同じように何もない空間から消えていった。
「ま、こういうことだね。」
照誠が完全に消えたのを確かめると、注川守は誇らしげにそう言った。