たたらシンフォニックオーケストラ~刀剣男士のための
第5章 「白雪姫より口笛吹いて働こう」初演奏と遡の始動
(もしかしたら、市村は死なずに済んだかもしれない)そんな思いが頭をよぎる。しかし、やりきれなさは無かった。
彼に提案したのは自分だが、それを快く引き受けたのは市村自身であり、死の危険も知っていた。それでも彼は恋仲の土方の為に立派にその役目をやり遂げたのだ。自分からしたらそれは脱帽ものだ
出来ることなら市村の最期を見てやりたかったが、まだ重大な仕事がいくつも残っている。
時計を見てから、被っている翁の面を取り、市村の方向へ立ち上がる。
「市村君、あんたすげぇよ。愛してる人の為に命を投げ出したんだから…全く見上げた根性だよ」
目頭が熱くなるのを必死で抑えると、目を瞑り、勇敢な武士の冥福を祈った。
数秒間頭を垂れると、土方を担ぎ『例』の場所へと急いだ。