第6章 吸血鬼の部屋。
以来、彼女は街角の花を買うのを止めた。
それが恋であるが故に。
見返りのある口付けを受けるのを拒んだのだ。
そして彼女は恋する僕の主人の部屋に入り浸り出した。
彼に血を分け与えルチアに届けてもらうようにしたのだ。
「レディ、体、辛いだろう?歩けるかい?」
ヴィアトリクスに云われふるふると震えながらも彼女は頷く。
「お手を、レディ。それとも肩を貸そうか?」
彼女のタイを拾い、再び彼は跪く。
「肩、抱いて、寒い」
血液を急激に失って冷えているのだろう。
ヴィアトリクスは頷いて彼女の肩を抱いて寝台まで先導する。