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愛のNight raid

第12章 懐かし語【吸血鬼主従】


「マダムはこの街を愛しておられた。新しい建物が建つたびに訪れてはオーナー殿と笑い合っていた」
吸血鬼は端末を閉じながら云う。
「ええ、この街は良い街です。わたくしも大好きです。ですからこの街で咲いていたい。花としてずっと」
ルチアも帳面に最後のサインをして仕舞う。

「そう……だな。又いつか国に帰る時があったら立ち寄ろう」
珍しくカップを手にヴィアトリクスは立ち上がる。洗うつもりなのかそのままキッチンへ向かう。
「ええ、その時はお供します。我が君」
ルチアは応えて彼に寄り添った。不老を手に入れた彼は出会った時のまま主人の背中辺りまでしか身丈が無い。

「ちっとも温かくないなぁ」
「当たり前だ。私達は冷血の生き物ぞ」
腰に巾着の様にしがみつく子弟を見てヴィアトリクス。
吸血鬼は基本生物学的に云えば死んでいるし血も冷え切っている。
それが温まるのは新しい血を蓄えた時だけで普段体を流れるのは冷たい物だ。








「いつかマダムの好きだった桜を植えに行きたいです」
「そうだな」
ルチアの言葉に頷き主人はサッとキッチンを片付けてしまう。
「眠ろう」「えぇ」
そろそろと朝の気配を纏い始める空を見て二人は明かりを消した一一。
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