第6章 吸血鬼の部屋。
ちゅぱあ…
と、赤い糸を引かせヴィアトリクスの牙が抜かれる。
ツプリと盛り上がる赤い血の粒をペロリと舐め取り、二つ並んで開いた穴に念入りに唾液を塗り込んで行く。
彼の唾液には止血の効果があった。
「ル、チアに必ず…」
震える手で服を握りミュラーは云う。
「ああ、レディからもらった血はルチアに必ず届けよう」
彼女は主人に血を吸わせそれを僕に捧げていた。
「レディの執念には私も感服するよ」
ある日一人で出かけたミュラーは道に迷った。
それを助けたのがルチアだ。
名乗らず去ったルチアを探し出し花売りの彼を買った。
手に、甘く口付けられ。
その手首から血を吸われた彼女はルチアに心酔した。
――美しく気高いと。