第5章 花売り【ドルイアド】
「切る?」
客が問えば、彼は大真面目に頷く。
「その子はね、何でも切りますよ、お夕飯の魚から神、人のえにし、何でもね!」
丁度客と別れ送り出したユリシスが小さな体を後ろから抱きながら答える。
「何でも?」
「それが神でも」
首無魔騎士は異界では名だたる戦士で、精霊の憑く特別製の剣を手に入れた。
神聖さを纏うその剣では不可視な物すら切れるのだ。
「いくら?」
客が呟くような小さな声で云えば、頑張れという様にドルイアドの背中を叩きユリシスは離れていく。
「その物の重さの硬貨を」
ドルイアドが云えば、客はそっと手袋に包まれた手を差し出す。
「これを切ってもらえるかな」
手袋が外される。