第12章 懐かし語【吸血鬼主従】
「僕をお望みならば」
雪が、少年の顔に貼り付いて溶けた一一。
つるんと雫が頬を滑り落ちる。
「よし、ならば私に何を望む?悪魔との契約の代償だ好きな事を云って良い」
彼の言葉に少年は肩をすくめる。
手を擦り合わせ言い辛そうにしていた。
「何だ」
急けば、ビクリと少年は震える。
「ココア……」
「うん?」
「主人が寝る前に飲んでいるココアがずっと羨ましくてきっと美味しいんだろうなと思っていました。ココアが飲みたいです」
駄目でしょうか一一と、おずおずと云う少年に、ハッハと彼は笑う。
懐の金貨があればココア等何杯だって飲めるのだ。
「よし、行こう」
少年の背に外套を掛けてやり、もう唇を焼かんばかりに燃えていた煙草を踏み消し彼は歩き出した一一。