第11章 竜王の部屋
「奥様見えてきやしたぜ!後少しでさぁ!」
ドルイアドが頬を紅潮させ云う。
「頑張って、奥様!」
ユリシスは担架の位置を直しながら云う。
「う、うん」
頷きファレンは額に張り付いた毛を払う。
「しんどくはないかな?」
王が優しく太い爪先で彼女の髪をすく。
「はい。はい。王」
答えるファレンに彼は優美に笑い首を捻りながら身を屈め彼女に口付けた。
「あ、出た」
ユリシスが云い、ふっと腹の中から何かが抜け落ちる。
「おっとっとー」
それを担架でドルイアドが掬い上げる。
「お疲れ様です奥様。卵が青みを帯びていたので男児ですよ。良き子をお生みになられましたね。では、王とお休み下さいませ。ごゆるりと」
ルチアが再び紅い酒をミュラーの口に運びながら云う。
「仮初の妻よ。別室に従者達が寝所を拵えている。ゆっくり休むとしよう」
「はい」
はだけてしまった布を掻き寄せつつ彼女は頷く。
「して、どうだった?我の与えるけらくは」
「最高でした……」
しゅるしゅる膨らんだ時の様にみるみる体を縮め人の姿に戻ったデュランダルがうつらうつらしている仮初の妻に微笑む。
「で、あろうな。子は我が一族が責任を持って育てる故案ずるな。さて、我の子を産んでくれた労をねぎらい寵愛の証を授けよう。どこに欲しい?」
問われ、そっと彼女は左手の薬指を示す。
「ほう、そこは人の子が婚姻の証をあしらう場所だと聞いた。よし」
頷き王は何か呪文を唱えると、そっと指に触れた。
そこはパッと輝き青い光を投げる。