第11章 竜王の部屋
「はい、奥様、痛いと感じるのは最初だけです。はい、息はつまらせると苦しいですから深呼吸をして下さい。はい、ひっひっ、ふー」
ルチアは上手に行き、彼女の腹をぐいぐい押す。
が、中身をしっかり孕んだ腹は凹まない。
「ひっひっふー」
云いながらファレンは息を吐く。
そうしていると痛みは引く。
そして……中身がコロコロと動いている。
しっかり腹の中に収まっていたソレがズルリと降って行こうと動いているのが分かった。
それを促すようにルチアがぐいぐい腹を押す。
「どうです?痛くはないですか?」
ルチアに云われ頷く。
不思議と痛いという感覚は消え失せ代わりに腹の中身を産み出したいという焦燥感が体を支配する。
早く早く、産みたい。
卵が見たい。
ルチアの腹を押すのを真似て自分でも腹を撫でる。
ゆっくり、ただ着実に卵は自分から出ようとしていた。
それがじんわり、染み込むように温かな愛しさを胸の中に広げる。
「よしよし、出てきていますね。ちゃんと受け止めて下さいね。奥様、出てくるように腹に力を入れて下さい」
ルチアに云われ彼女はふっと息を吸いながら腹に力を入れてみる。
筋肉に押され卵が下にぐるぐる転がった。
その感触が堪らなく愛おしい。
あゝ、何て甘美な苦しみだろう。
息む度に絞まる喉も熱い頭もまるで酒に酔う心地良さの様だ。
はあはあと息を荒げながらルチアに宥め賺されながら卵を産み出す。