第10章 【VIP】屍鬼の部屋
「う、う゛んっ」
よしよしと少年達にあやされ彼女は目元を拭う。
「ね、マリアクレア、そろそろ頃合いじゃない?」
「ん。だらだらしてる内に一刻経ったぜ」
二人は寝転んだままの彼女を優しく撫でながら笑う。
「…?」
疑問符を浮かべる主人に二人はニィと悪く笑う。
「いやぁ、実は利き屍肉っていうのは嘘でして…」
シシシッと笑うユリシス。
「実はあれ両方俺っちの肉さ…まぁ、接いだのと生やしたのって違いはあるけど多分味は変わらないだろォなぁ」
云いながら空になった飲み物の壜を振るマリアクレア。
「ふぁ?なんれ?」
覚束ない舌に自分でも閉口しつつ主人は問う。
「これは実は口当たりよく割ってありますが、龍王の生肝酒でして…」
ユリシスがフフッと悪戯っぽく笑う。
「効能は急激な酔いと…魔人化…」
ユリシスが歌う様に云いながら寝転びキョトンとしている女主人の体のラインを指でなぞる。
「まじんか?」
聞き慣れない言葉に子供の様なあどけない口調で彼女は返す。
「ソッさぁ、一時的に俺達みたいな人外規格になれんの」
ベッドの下に壜を転がすマリアクレア。
「え、と、…んん?」
意味が分からず首を傾げるミュラーに二人の少年が顔を見合わせクスクス笑う。
「仲良しさんねー」
確かに酔いはよく回っていた。
彼女はホワホワとして酒気をまとわせている。