第10章 【VIP】屍鬼の部屋
「可愛いねぇ、あーるじぃ」
赤みを帯びた頬に何度も唇をおとす彼。
その口も息も冷たく彼女は心地よい。
「ね、キスしても良いよナァ」
こくこくやわらかい表情で頷く彼女にちゅうっと少年は口付けた。
そのまま舌で唇をなぞれば酒気をまとった息がふっと吹き込まれる。
「マリアクレア…好きっ、好きよ」
ぎゅっと抱き寄せられ彼はクスクス笑う。
「俺っちもサァ」
唇を寄せれば彼女から少年に口付けてくる。
ユリシスはクルクルと頬の中で飴玉を転がしつつ脱力しきった彼女の手を取りその先に吸い付く。
「ふっ、ユリシス、くすぐったい…」
尚も口吸いを求める少年を横にやりながらファレンが身をよじる。
「可愛いですよ、主さん。食べてしまいたいなぁ」
ちゅっちゅっと音を立てて唇の中に指を招き入れ、ユリシス。
「こ、こん人は俺っちの主人たい」
いつも以上に訛る少年にユリシスは笑いながらちゅうちゅうと指を吸い首を傾げる。
「ユリシスくんみたいな可愛い人になら〜、食べられちゃってもい〜かなぁ」
間延びした声にマリアクレアが歯軋りする。
「主さんのお稚児趣味っ」
「ちがーいますぅ」
わしゃわしゃ自らの胸の中でふてくされる少年の頭を撫でてミュラー。
「ちょっと、疲れちゃったから。御免ね。悲しくなっちゃったの」
ぐすっと鼻をすする主に、少年達はよってたかってよしよしと頭を撫で返す。
そして…、
「大丈夫ですよ…主、嫌な事なんか忘れてしまいましょう」
「そっさそっさ、ここはあんたみたいな世迷子の家、なんだからサァ」
交互に白い指先に誓う様に口付ける屍鬼達。