第9章 【VIP】吸血鬼の部屋
「ケダモノ」
くっとカップの中身を嚥下して彼女。
「そうだよ、男は皆ケダモノだよ、レディ。ルチアもね」
クスクスと声を出して彼は笑う。
「ルチアは違うわ……ルチアは……彼は、天使よ……」
白い肌に薄紅の花が咲く。
それを見て、彼は眉を顰めた。
「君はルチアに夢を見過ぎだ」
「誰にも迷惑はかけていないのだから放っておいて」
あくまで彼女の素面の態度は頑なだ。
ヴィアトリクスは溜息をつく。
「全く一度会っただけなのによくまぁそれだけ執着できるものだ……私だってファレン……君を愛しているのに」
テーブル越しに手を伸ばし、まだ紅をたたえた頬に触れる。
パシンとそれをすげなくミュラーは払う。
「勘違いしないでちょうだい。私は貴方には特別な感情は無いの……」
払われた手でなお彼女の指に自らのものを絡ませヴィアトリクス。
「知っているさ。でも私はレディが好きだよ」
甘い声で云い、引き寄せた手の甲に冷たい口付けを落とす。
「……ッ」
何かを云おうとした彼女の声にノックが重なる。