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みなそこであいうえお作文 ハイキュー!

第2章 何はなくともつかめなくとも


彼の大きな手がものすごい勢いで振り被った。ボールはコートに落ちず、夜久くんが腕にかすり軌道が変更される。その先にいたのが私だと気づくのが遅かった。ものすごい勢いだった。気付いた何人かがこちらに向けて何か言っている。

気が付いたときには、ボールは顔の前だった。避けることもできないまま、私は顔面を強打された。
辛うじて目をつむれたが、世界がぐにゃりと曲がったのがわかった。痛みよりも、めまいが先に来た。私は受け身もとれずに倒れこんだ。

スパイクが音を鳴らしながら近づいてくるのがわかる。それもいっぱい。

「大丈夫か!?」

夜久君が心配そうな声をしていた。私はジンジンする顔を手で抑えながらむくりと起き上る。

「……大丈夫です」

「本当に痛いところは!?」

少し考えて首をかしげる。

「たぶん、ありません」

上からため息が降ってきた。たぶん主将だ。

「顔覆ってるくせに大丈夫もあるかよ、見せろ」

そう言って私の手を顔からはがした。するとみんなが息をのむのがわかる。ようやっと目を開けてみるとみんなの心配した顔があった。

「血、ちぃぃぃ!!」

虎君が叫びだし、リエーフも同じような反応をした。
夜久君は慌てて救急箱って言いながらワタワタし始め、準備が良い研磨君がそれをもう準備していた。
鼻のあたりから温かいものが流れている。手でこすると血がついていた。鼻血だ。

そしたら軽く頭を触れられて上に向けられる。そして主将と目が合いにやりと笑われる。そして鼻に詰め物を入れられた。

「まぁ、これで大丈夫だろ」

そして、頭を軽く撫でられる。

「悪かったな、痛いとこあったら言えよ」

もう、みんなが慌てて騒いでいるところとか、冷静な判断をして助けてくれる人とかいて私は胸が詰まる様に苦しくなった。胸が痛い。何だろう。この気持ちは、わからない。でも、だけど。

――わからないけど……。

私のために心配そうな顔とか、優しくしてくれたりとかしてくれる。そんなことが苦しくて、痛いほど苦しくて。
でも、なんだか嬉しくて、涙が出そうなほど嬉しくて。痛みなんてないのに私はボロボロ涙を落としていった。
そしたら主将がまた頭を軽く撫でた。

「何笑いながら泣いてんだよ」

確かにそうだ。でも、自分でもよくわからないけど笑ってしまうのだ。
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