第4章 こんな暗闇でもたまには優しい
私は自分でも表情が変わるのがわかった。そしてペットボトルを受け取ろうとした。
だが、私の指先が触れる寸前に上からかすめ取られた。そして抗議をする暇なく、飲み干されていく。研磨くんはすごく嫌そうな顔をした。
「目の前で差し出すとはお前なかなかやるな」
「それより、飲み干すなんてひどい」
意気消沈した私など放っておいて幼馴染の言い合いが始まる。
もう慣れた光景に私はクスリと笑う。笑い声に二人が一斉にこちらを向いた。
そして、またあの日を思い出した。
そういえば二人に出会ってまだ数か月しか経っていない。それなのにこんなにも仲良くなれて、私を変えてくれた二人が愛おしい。そういえばしっかりと感謝したことなどなかった。謝罪しても感謝してもめんどくさそうにされるだけなのだろうけど。
私は手をめえいっぱいに広げ、二人に抱き付く。
驚いて二人は声をあげたけど、そんなことは気にならない。
力いっぱい抱き付いて、彼らの耳元でささやく。
「……ありがとう」
すると身じろぎしていた二人はしばらく何も言わずに黙っていた。彼らも思いだしているのだろうか。あの日のことを。そしてなぜか二人して笑い出した。
「いーえ、こちらこそ」
「……咲に会えてよかった」
その言葉に私はすこし涙腺がゆるんだけれど、もう泣きはしない。
静かな静かな暗い夜。
真っ暗な闇の中の一筋の光はしっかりと私を照らしている。
それは優しく穏やかに私を照らし続けるだろう。
私はこれからも悩むことがあるだろうけれど、かけがいのない絆を持ってしまったから平気だ。
だから、私はこれからも生きていけるのだ