第2章 何はなくともつかめなくとも
「だって、よくわからないけど、私――」
嗚咽が混じるほど泣き出した私に、さらに頭に重みが来た。手を伸ばしてきたのは研磨君だった。
「よかった。 ――安心した?」
優しい手つきで撫でられる。主将とは違ったやり方だ。そして研磨君の言葉を私は頭の中でかみ砕いていく。つまり、私は緊張していたということだろうか?
慣れない作業やわからないことの方が多かった。そうかもしれない。なれないことをしていた。でも、その度に誰かが私に手を差し伸べた。私がこの場かにいないと認識されることはない。
「うん、ありがとう」
笑みを研磨君に向けると彼ははっとしたように顔をそらした。
するとどんどん頭の重みが増してきた。みんなが頭のいたる所をなでていた。メンバーみんなが手をのせていた。
「痛いとこあったらすぐに言えよ!」
「オレのスパイクじゃなくってよかったっすね」
「リエーフ! お前次レシーブな」
「そんな!?」
「奇跡の女子マネをこんな目に合わせるとは不覚」
「オメーもレシーブだ山本」
「巻き添え!?」
みんなの軽口にまた私は笑顔になる。こんな気持ちになったのは初めてだ。
心の中でありがとうを言いながら私は初めて誰かとつながることが出来たと思えた。
それは、私の思い違いではないだろう。こんなに嬉しかったことが今までなかった。
泣きながら私は彼らに言葉にならない声で何度も何度も礼を言った。