第22章 赤い船
ガシガシと頭を撫でられた
シャンクスの我が儘が発端だったが、幹部連中の同意も得られたし、若い奴らも噂の賞金首に興味を持っていた
つまり、赤髪海賊団の総意
だから気にするなと、笑顔で言われた
シャンクスはそういう大事な事は全然教えてくれない
イリスに気を使わせ無いためかもしれないが、わざわざ会いに来てくれたならちゃんとお礼も言いたいに……
ベックマンはさすが副船長だけあってシャンクスの足りない所をちゃんとフォローしてくれる
冷静で優しくて、昔と変わらないなぁ……なんてしみじみ思っていると
「海軍との戦闘も久し振りだったし、うちの若い奴らの、いい息抜きになったからな」
そうだよなぁ~と相槌をうち、ガハハッと豪快に笑う幹部達
さらっと出た過激な一言に、やっぱり海賊なんだな、と思わされたイリス
そこへ、一際大きな歓声が聞こえる
目を向けると、グレイスがグラスを逆さに勝鬨をあげていた
高く掲げたグラスを、これ見よがしにシャンクスに見せつけている
しかしシャンクスはというと、そんなグレイスを見ることも出来ずに突っ伏している
「はははっ、あいつ強いな」
お頭が負けるなんてな、とベックマン
「グレイスってあんなにお酒強かったんだ~」
感心するイリス
幹部達はまたガハハッと笑い、お頭ダせェ~なんて軽口をたたきあう
負けた相手に肩を借り、シャンクスがこちらにやって来る
シャンクスが、しきりに手招きしてくるので側に寄るとイリスのおでこにキスをして、そのまま膝に頭を預けた
「うわっ!お酒臭いよシャンクス」
イリスもその行為には慣れたもので、動じることはない
再会してからのシャンクスは、何かにつけて額にキスをしてくる
宴の間、話の途中、ただ近くを通っただけでもキスしてくるので慣れない方がおかしいと言うもの
それに、イリスはこの行為が嫌ではなかった
勿論一番はエースだが、シャンクスほどの男に特別扱いされている事実にほんの少しの優越感を感じ、膝に乗った頭を優しくなでてあげた
夜の海を吹く穏やかな風
親子ほど歳の離れた少女と信頼できる仲間達
シャンクスは酔いつぶれながらも、この幸せな光景に満足していた