第22章 赤い船
シャンクスが宴を宣言した直後
「ヴおぉっ!」
デカイ酒瓶がシャンクスの後頭部にヒットした
イリスと、その他大勢が驚きで固まるなか、ベックマンをはじめとする幹部達は爆笑していた
新世界に君臨する四皇の一人を殴りつける奴などほぼいない
しかも酒瓶で
「イリスちゃんは明日、お空を飛ばなきゃいけないから今夜はしっかり休んでちょうだい」
グレイスが優しい笑顔で微笑む
そして、
「まだ飲み足りないなら私が相手になるわよ?明日イリスちゃんを見送れなくさせてあ·げ·る」
挑発的な態度で酒瓶をもてあそぶ
出会った当初の四皇シャンクスにびびっていたグレイスはもういない
酒の席でのコミュニケーションのすごさには感心したが、酒量によって決まる海賊(男性)ならではのランク付けは女であるイリスには理解出来ないものだった
ぐぬぬと唸るシャンクス
余裕のグレイス
今夜もまた
どちらかが倒れるまでグラスは傾けられる
出発の朝
少ない荷物を小舟に乗せ終えたイリスとグレイスが振り向くと、そこには赤髪海賊団全員が見送りに出ていた
「お世話になりました!ひさしぶりに皆に会えて嬉しかった…………大丈夫?シャンクス……」
元気よく挨拶をしたイリスの声がシャンクスの頭に響く
二日酔いの彼にはツライだろう
イリスは全員に聞こえるようにとの配慮からだったのだが、目の前で頭を抱えて悶絶しているシャンクスにはそんな配慮は余計なお世話だったようだ
昨夜もまた、グレイスに飲み負かされたシャンクスは気力で甲板まで出て来たものの今にも倒れそうだ
「わりーな……ちょっと小声で頼む」
顔と顔を近づけ小さくしゃべる
イリスの声はシャンクス以外には聞こえない
時おり、うなずく姿や笑っているのが見える
今回イリスと話せなかった船員達がうらめしそうにそれを見ていた
「飲みすぎたのはお頭なのに…………」
「またイリスさんを独り占めしている」
「最後くらい話したい」
「せめて声聞きてぇ~」
船員達の愚痴が聞こえたのか、グレイスがこっそり彼らに近づく